ジョン万次郎は江戸幕末に14歳で土佐沖に出漁中遭難。そして米国の捕鯨船に救助され、彼の才能を見抜いた船長の強い引き立てにより、当時の日本人として初めてアメリカ本土に渡りました。ホイットフィールド船長の故郷、マサチューセッツ州、フェアへブンで英語、最新の測量や航海術を学んだ後、鎖国か開国かに揺れる日本に帰国し、様々な偏見、障害を乗り越え、日本の夜明け、そして列強との交渉に多大な功績を残しました。さらには、土佐藩主山内容堂の指揮下、藩の若き青年達、つまり、河田小竜から坂本竜馬にいたるまで万次郎によって意識改革がもたらされました。土佐藩や薩摩藩がいち早く開国、そして富国強兵のために先進諸国の技術、知識を吸収する必要を切に感じたのもジョン万次郎の影響によることが多大です。
さて、フェアヘブンには、ホイットフィールド=万次郎フレンドシップソサエティーという団体が存在します。 前身は、もう何十年に渡り活動するフェアヘブン、ニューベッドフォード=土佐清水市姉妹都市委員会であり、国際的な視野を包括するということで現在の名称に落ち着きました。「Manjiro Trail」という名で万次郎が暮らしていたホイットフィールド(日本語的発音ではウイットフィールド)船長宅を始め万次郎が通った学校や、教会、教師の自宅などが整備されています。特に、ホイットフィールド船長宅は日本人の篤志家日野原氏が中心になり、朽ちかけている家屋を買収、2009年5月7日(万次郎がこの家に到着した日)にオープニングの式典が開かれました。
写真左(ホイットフィールド船長邸)、右(ホイットフィールド船長邸内部)
写真左(万次郎が読み書きを習った、オールドストーンスクール)、右(ミリセント図書館)
私達がフェアヘブンを訪れた日は、お忙しいなか、ホイットフィールド=万次郎フレンドシップソサエティー会長のルーニー夫妻が温かく迎えていただきました。ジェリーさんと奥様のアヤコさん、長年国際交流に関わり、地元でのお顔の広さには感服しました。ご夫妻の好意により、当地の見所、特別な所蔵品など見学できる機会をアレンジしていただきました。先ずは、ホイットフィールド=万次郎フレンドシップソサエティーの成り立ちや、現在ウイットフィールド船長宅の再現プロジェクトがどのように進行しているかのお話をお聞きしました。フェアヘブンは、捕鯨、貿易の全盛期アメリカでも非常に豊かな地域であったということで、現存している公的建物、教会など大都市に引けをとらない、言い換えれば非常に価値の高い構造物との評価があります。街の中央部には「こんな華麗な建築物が!!」と、突然の巨大建築に肝を抜かれました。
そして万次郎トレールを辿り、万次郎が読み書きを習った、オールドストーンスクールや、数々の記念品を納めたミリセント図書館を見学しました。特に印象に残ったのはミリセント図書館が長年にわたって保存している大型記帳本の内容です。皇太子時代の明仁様、美智子様の記名が一般の方たちの記帳に混在されていました。興味深かったには、現在民主党幹事長である小沢一郎氏が、「自由民主党幹事長 小沢一郎」と1ページ一人独占で記名されていたことでした。私達も記念に記帳しましたが、流石に1ページまるまる使う厚顔さはありませんでした(笑)。
その後、隣接するニューベッドフォードへ移動。捕鯨と貿易、近代では水産の集積地である当地は、捕鯨、貿易によって栄えた過去の栄光と、最近の漁業基地としての立場が混在する微妙な地域です。漁業を得意とするポルトガル系の移民が住民の多数を占めるボストン近郊でもユニークな街ですが、ポルトガル郷土料理や地元産シーフードなどを気安く楽しめる地域です。
ここでのお勧めは捕鯨博物館、実際の鯨の骨格を(それも超大型)を入り口の空間に展示。さらには当時の捕鯨船のレプリカを展示し体感できるアレンジもあります。鯨採りとしてアメリカ人からも一目置かれた万次郎の当時の様子に姿を重ねることの出来た展示でした。また、ショップで扱われるセンスのいいTシャツやトレーナーなども目を惹かれました。
写真左(鯨の骨格展示)、右(捕鯨博物館)
ざっと 廻れば、半日ちょっと、ゆっくり廻れば2日くらいかけたいフェアヘブン、ニューベッドフォードでした。最近は、湾に面した民宿やホテルなどが完備され、南に位置するマーサスビンヤード島への定期フェリーの発着港としてリゾート的な面もあるようです。9000キロ離れた日本、そして姉妹都市である土佐清水とも強い絆を感じるとともに、ニューイングランド精神を継承しているこの地域を強く印象付けられました。素朴ながらも、世界に誇る草の根交流の原点として、一度ならずとして訪ねて見たいと感じました。
写真左(姉妹都市、土佐清水にある中浜万次郎像)
ボストンはこれから夏に向けて、最高のシーズンを迎えます。是非、歴史のあるこの町にお立ち寄り下さい。
スタッフ一同心よりお待ち申ししております。
情報提供:トータルトラベル